P1-project

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1997年2月1日
福岡シーホーク・ホテル

MINAMI~ピアノ・ピース・オブ・セナ

  •  1996年12月30日、大学院時代の友人と忘年会。そこで、A君が2月に結婚するということを知った。A君は私に披露宴でのピアノ演奏を依頼してきた。人前で弾くのなんて、中学校の校内合唱コンクール以来だろうか。

     ピアノは学生時代からろくに練習していない。でも、まったく弾けない人から見れば、ちょっとでも指が動けば神業に見えるようで、A君も学生時代に私がちょっと弾いたのを見て、私にお願いしたのだ。

     実は、ちょっと前からピアノの先生について10数年ぶりにレッスンを再開していた。難しい曲でなければなんとかなる、と思い引き受けた。リクエストは新婦の好きな曲である、「MINAMI~ピアノ・ピース・オブ・セナ」。この曲は木村拓也主演のロングバケーションというテレビ番組でキムタクが弾いていたもの。

     しかし、私はロンバケという番組があることは知っていたが、一度も見たことがない。そこで、A君からビデオを送ってもらうことにした。

     年が明けてA君からビデオが届いた。ビデオはキムタクが演奏している部分だけなのでストーリーはぜんぜん分からないが、山口智子が泣いていた。

     どんな曲なのかとキムタクの演奏(もちろん本当に弾いている人は違う)を聞いたが、ゆったりした曲でまあなんとかなるかな、と思っていたら途中で結構激しい展開。おっと、こりゃ耳コピーしてたら時間が足りない。なんと言っても披露宴まであと1ヶ月もないのだから。

     次の日、楽譜を購入。楽譜があるからと言ってすぐに弾けるわけではない。A君のためにも下手な演奏はできない。毎日練習あるのみ。

     しかし、スキーして、大阪実業団駅伝に出て、FFⅦで遊んで、う~ん、ぜんぜん練習していない。こうなったらアドリブを織り交ぜて誤魔化すしかない。

     2月1日。ついに本番。結婚式は福岡ドームに隣接しているシーホーク・ホテルで行われた。このホテルは船、海賊がテーマで、荷物を運ぶ台車には舵が取り付けられてあり、入り口に立つドアマンはキャプテン・ハーロック、ポーターは海賊の下っ端の格好である。初めてこのホテルに来た私は、入り口に立つキャプテン・ハーロックを見て、ホテルだとは思えず、まわりをウロウロしてしまった。

     まあ、そんなことはどうでもいい。披露宴は進み、私の出番が近づく。緊張して酒を飲んでも酔っ払えない。

     ついに、出番が来た。もう、頭の中は真っ白。

     ピアノはスタインウェイだった。しかし、この頃の私には、どんなピアノでも同じこと。まして、披露宴なんて常にざわついている。たまにカチャカチャと鳴る食事の音がピアノの音と重なり集中できない。子供が珍しがって覗き込む。ビデオがまわる。写真のフラッシュがたかれる。

     終わった。手の振るえがまだ止まらない。うまく弾けた弾けないより、止まらずに弾けたことにホッとした。

     二次会の場所は福岡ドーム内のスポーツバー。そこにもピアノがあった。既にしこたま酔っ払っていた私は、アドリブで狂ったようにピアノを叩いていた。

     後日、A君の結婚式ビデオを見た。私の演奏中にテープが切れたため、全部を聞くことはできなかった。が、まあ許せる範囲だったかな。

     本番の演奏はボロボロだったが、A君夫妻にはちゃんと録音したテープをプレゼントした。これは、まずまずの出来具合で、今もA君夫妻の家で大切に保管されている(はず)。

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