P1-project

P1-project

P1-project

P1-project

 ワインエキスパート

 アルコールは元々大好きだったが、数年前から好んでワインを飲むようになった。いろいろ飲んでいるうちに、ブドウの種類なども分かるようになり、好き嫌いもそれなりに出てきて、会社近くのシャンパンバーによく行くようにもなった。

 知人から「神の雫」というマンガがあることを聞き、一気に読破して、ワインって奥が深いんだねーと思うようにもなった頃、ワインバーの店員からワインスクールを始めるので参加しないかと誘われた。

 もちろん有料である。

 全20回のスクールで、ティスティングも含んで126,000円!

 高いような気もするが、毎回、飲めるので安い気もする。まあ、ワインのことをちゃんと勉強するのも悪くないと思い、大枚をはたいて参加。ちなみに、店員から誘われたときに一緒にいた会社の同僚は、ちょうど勉強しようと思っていた(?)らしく、私がトイレに行っている間に申込書にサインをしていた。この人、ほとんど飲めないのに大丈夫なのか?という疑問の余地を挟めないほどの勢いで。

 スクールは、ワインエキスパート、ソムリエを目指す人のために開講されたのだが、ここで、ソムリエとエキスパートについて簡単に説明しよう。

 両方ともソムリエ協会が認定する資格であり、ソムリエの場合は、5年間以上何らかの形でワインに従事している経験が必要で(例えばレストランや酒屋で働いているなど、試験申込時に証明が必要)、エキスパートは誰でも受験できる資格がある。もちろん未成年はダメだけど。ソムリエ、エキスパート以外にもワインアドバイザーとか、ソムリエ資格を持ってさらに何年かあとに受験できるシニア・ソムリエなどもある。

 試験の内容は、ソムリエもエキスパートもアドバイザーもほぼ同じ。一次試験は約100問のマークシート方式で10問程度が違う問題になっているが、難易度は全く同じ。一次試験の後は二次試験があり、二次ではティスティングをして、ワインの産地、年代、品種、色調、香り、味などを答える。ソムリエの場合は、さらに実技(試験官の前でワインを開けて注ぐ)がある。実技を除いたものは、ほぼ同じなので、エキスパートはソムリエ並みの知識や味覚、表現力などが要求されるというわけ。

 スクールでは、この試験の合格を目指すものなのだが、内容はかなり濃い。単純に各地方のワインの種類を覚えるだけでなく、品質管理、輸入に関する知識、公衆衛生なども含まれる。

 ワインに詳しい人はたくさんいるだろうが、エボラ出血は何次感染類であるか、なんて普通は知らないだろうし、知る必要もないだろう。でも、試験にそんな問題が出るから、当然、スクールでも、病原菌の種類やおしぼりの管理方法など、延々と述べられるし、覚えなければならない。

 まあ、メインに習うことはワイン、ブドウの種類なのだが、辞書まるごと1冊覚えるぐらいの多さ。あー、スクールなどに入らなければよかった。

 同じブドウでも、国が違えば呼び方が変わるし、発音も変わるので、何が何だか・・・ 聞いたそばから忘れていく。

 ま、覚えるかどうかはさておき、スクールでは毎回6種類のティスティングができるので、それが楽しみ。ティスティングでは、色調がどうの、香りがどうの、といちいちコメントをするのだが、面倒くさいので、私は飲むのに徹する(笑)

 しかし、私のすごいところは、ブラインドで6種類のワインを飲んで、一番美味しいと思ったものが、市販価格で一番高い、ということであろうか(自慢できるのか?)。

 何だかんだ言いながらも、皆勤したスクールも終わると、いよいよ試験。8月17日に一次試験があったのだが、本格的に勉強をしたのは、その1週間前。一次試験の合格点は公表されないが、70点以上と言われている。過去問題、予想問題を解くと、40点。こりゃ、不合格間違いない。しかし、次の日は50点。さらに次は55点。試験3日前には70点近く取れるようになり前日には75点。

 これで何とかなるか。

 で、いよいよ試験本番。

 これまでの人生、幾多の試験を受験テクニックで切り抜けてきた真骨頂。直前にチェックした内容が出題されていたりして、何とか75点はクリア(したと思う)。

 9月になって合格通知が来たが、まあ、予想通りの結果(えらそーに、と思われようが予想通りじゃ!)。

 しかし、ここからが問題である。二次試験はティスティング。ブラインドで飲んだワインを、色、香り、味などに分類して的確に答えなければならない。

 マンガ「神の雫」では、

 「おっ、おっおお・・・ これは偉大なワインで、ミレーの晩鐘である」

なんて表現があるが、ソムリエの世界ではそんな表現は許されない。

 万人に分かる表現をしなければならないということで、イチゴやバラ、杏の香りがする、というような言い方をしなければならない。

 ちなみに、ワイン用のティスティング用語には、「森の下生え」「麝香(じゃこう)」「ゼラニウム」「獣」とかいう表現があるが、

 これが万人に分かるのか?

といちいち突っ込みたくなる用語はたくさんある。


 個人的には、「神の雫」の方がよほど分かりやすいと思うのだが・・・

 どーでもいいことだが、私は「醤油臭い」「味噌」「コーラ」とかいう言葉を使って、いつも先生にたしなめられていた。

 二次試験は、自分の感覚をワイン用の言葉で表現しなければならないので、本当に難しい。自分では、とてもそうは思っていなくても、そんな香りを感じていなくても、無理やり、ワイン用ティスティングコメントを作り出すのだ。あるソムリエは、自分が知らない香りでも、これがその香りだ、ワインではその言葉で表現する、と自分に言い聞かせて使っているとゲロしてくれたが、

 そんな表現に何の意味があるんじゃ!

 ま、言いたいことはたくさんあるが、試験は試験。不本意ながら、試験では”ちゃんと”答えて終了。

 試験後は一次と違って、落ちる可能性の方が大きいな、という感じだった。落ちても、来年に限って、一次試験免除で二次を受けられるので、一年後に再挑戦か、めんどくせーなー、と思いつつ結果を待つことに。

 結果は、合格!

 いやー、よかった、よかった。何はともあれ、ワインエキスパートの資格をゲット!!!

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
最後に、これを最後まで読んでくれて
試験を受けようと思った人(いるのか?)にアドバイス
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 ボルドーの1〜5級シャトー、ブルゴーニュのグランクリュ、イタリアのDOCGぐらいならほぼ全部言える、って人ならスクールに行く必要もなく、一次試験前に集中的に1〜2週間勉強すれば何とかなるでしょう。試験の出題範囲は広く、覚える量は半端じゃないので、この程度のことを知らないのなら、少しずつ、時間をかけて勉強した方がいいでしょう。

 私は、ほとんど何も知らない状態でした。本格的に勉強したのは1週間程度ですが、通勤の電車の中の10分ぐらいはテキストをペラペラめくっていました。なので、覚えていなくても、何が重要で何を覚えなければならないかを知っている状態でした。

 また、コツコツやるにしても、一人で勉強するよりも高い金を払ってスクールに行った方が得策です。スクールに行けば、重要なもの重要でないものが明確になります(スクールにもよるでしょうが)。

 二次試験はティスティングですが、答えるコツがあります。二次試験対策はいろんなところでやっているので、これは高い金を払ってでも受ける価値はあるでしょう。

 ちなみに、ティスティングは口に含んで吐き出すのが基本です(私は飲みますが)。どんな優れたソムリエでも飲んでしまうと、感覚が鈍ります。飲まないので、アルコールがダメな人でも、ぜんぜん問題ありません。

 ま、試験のための勉強は試験が終わるとすぐに忘れてしまうものですが、資格とはそんなもんかな。

「喜怒哀楽」トップに戻る